長寿の元として知られる地中海料理の中心を担うのが、オリーブオイル。
百貨店ではオリーブオイル専門店も出始め、某情報ニュース番組の料理コーナーで、速水もこみちさんが使うことでも有名です。
リノール酸という体に良いとされる成分が多い、健康に良いオイルと言われています。しかし一方で偽物や粗悪品が多い問題も。
ここでは、オリーブオイルのランクや活用法、できるだけ良質なオリーブオイルの見分け方をご紹介します。
特徴
なたね油やごま油など、調理に使う植物油には多くの種類があります。しかし、そのほとんどは種を加熱してから加工しています。
加熱してから加工するほうが、より多くの油を絞ることができるからです。しかし油分は加熱すると酸化し、劣化してしまいます。
劣化した油は体を酸化させる作用が強く、病気や抵抗力低下など良くない作用を及ぼすと言われています。(加熱せずに絞った油もあります。「玉締め」「低温圧搾」「コールドプレス」と書かれたものは加熱していません。)
オリーブオイルは、加熱せずに製造する点が他の油と異なります。オリーブオイルを砕いて絞り、分離するだけで抽出できます。(ポマースオリーブオイルという工業用油は、溶剤で抽出します)
オリーブオイルを「フレッシュジュース」と言われることがあるのは、この製法のためです。
種類
オリーブオイルには、様々な種類があります。
絞って遠心分離をかけられた油を「ヴァージン・オリーブオイル」と呼びます。最も自然な状態ですが個性が強く、中には非常に辛いもの、苦いもの、酸味の強いものがあります。
ヴァージン・オリーブオイルは「酸度」が少ないものが高品質とされ、酸度0.8%未満で薫りが良く、油の質が良いものを「エクストラ・ヴァージン・オイル」と呼びます。
酸度2.0未満で、良質なものは「ファイン・ヴァージン・オイル」。
酸度3.3未満で欠点がいくつかあるものを「オーディナリー・ヴァージン・オイル」。
酸度3.3以上で、そのままでは食用に向かないものを「ランパルデ・ヴァージン・オイル」と呼びます。
質が良くないオリーブオイルは、脱臭や脱酸などを行い精製します。
精製して酸度0.3以下にしたものを精製オリーブオイルといい、これにヴァージンオリーブオイルを添加し、酸度1.0以下にしたものを「ピュア・オリーブオイル」と呼びます。
さらに、絞りかすに溶剤を注いで抽出した油を「粗製オリーブポマースオイル」と呼びます。
これは工業油で、国際オリーブ協会の規格ではオリーブオイルと記載することはできません。
ただし、これを精製したものにヴァージンオリーブオイルを添加したものなら、JASにクリアしたものなら食用にできます。
安価なオリーブオイルは、精製ポマースオイルを使ったものが大半と言われています。少々高くても、信頼できるメーカーのオリーブオイルを購入しましょう。
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効果・効能
オリーブオイルをたっぷり使う地中海料理は健康に良く、心臓病などを防ぐ効果があると言われています。
それはエクストラ・ヴァージン・オリーブオイルに含まれるオレオカンタールという成分のおかげだと考えられています。
抗炎症作用があり、風邪薬のイブプロフェンに近い働きをします。この成分が炎症作用を起こす物質の生成を邪魔するため、炎症を抑える効果があります。
オレイン酸は善玉コレステロールを増やし、動脈硬化や心筋梗塞など、循環器系の病気を改善する効果が期待できます。
腸を刺激するため、便秘の改善にも役立ちます。しかし、摂取しすぎると下痢を起こすこともあるため、注意が必要です。
上質なオリーブオイルは体に良いものですが、100gで884kcalもあります。一般的な油と同じだけ高カロリーなので、使いすぎには注意しましょう。
フリットなど揚げ物は、かなりの量の油を使います。美味しいですが、食べ過ぎると肥満の元になります。
利用方法と注意
近年、オリーブオイルの一大産地では異常気象や病気などが原因で、収穫量が大幅に減っています。
そのため偽物が横行し、大きな問題になっています。
特にイタリアでは、マフィアがオリーブオイルに大豆油を添加した偽装オリーブオイルを販売し、荒稼ぎしています。
オリーブオイルは適度なコクがある油ですが、大豆油はベタベタした触感なので(厚揚げの表面のベタつきが参考になります)、触ればある程度は分かります。
アメリカでは、ひまわり油に色づけした偽物が多く流通しているという報告されています。
偽装でなくても、オリーブ・ポーマス・オイルを加工したものがたくさん出回っています。
粗悪品は健康を害する可能性が高いため、できるだけ信頼できるメーカーのものを選ぶと良いでしょう。
オリーブオイル専門店で購入する、管理が徹底している大手メーカーのものを選ぶ、というのも手段です。
偽装オリーブオイルは大きな問題になっていますが、生産者も黙ってはいません。OLIVE JAPANなどのイベントを通して品評会などを行い、安全かつ高品質なオリーブオイルの普及に勤めています。
OLIVE JAPANで入賞したメーカーなら、ほぼ確実に安全と言えるでしょう。
なにより一番大事なのは、一度でも本物を味わうこと。本物を知った舌を騙すことはできません。
オリーブオイルは、様々な料理に活用できます。イタリア料理が有名ですが、フランス南部、ギリシャ、トルコ、レバノンの料理にも多く使われています。
バルサミコ酢と塩と合わせてドレッシングに、パスタソース、マリネ、フリット、ブルスケッタやスペイン料理の油煮アヒージョなど、様々なレシピがあります。
揚げ物や加熱するものはピュア・オリーブオイル、生で食べるものはヴァージン・オリーブオイルが適していると言われています。
賞味期限は1ヶ月ほど。たとえ本物でも酸化したら台無しです。小さな瓶をこまめに買うことをお勧めします。
他にも、肌の保湿、髪のリンス代わりにも使うことがあります。
エピソード
オリーブ栽培は地中海沿岸で始まりました。諸説ありますが、オリーブオイルを初めて使ったのはギリシャのクレタ島と考えられています。この地域で紀元前3500年前の貯蔵壷が見つかりました。
古代ローマでは不作の時に備えて貯蔵し、お祝いのときにふるまっていた記録が残っています。戦いに勝利した際、兵士にボーナスとして2ガロン(8kg弱)のオリーブオイルを与えられたそうです。
当時は人力で、石臼で牽いていたため、現在よりずっとオリーブオイルは貴重品でした。かなりのボーナスだったと推測できます。
日本では明治時代からオリーブの栽培が始まりました。当時は缶詰に詰める油を作るために始め、様々な地域で試験栽培したところ、香川県の小豆島で成功しました。
農家の努力はもちろん、小豆島の乾燥した風土と雨の少なさが、オリーブの栽培に適しているのかもしれません。
現在でも小豆島はオリーブ栽培が盛んで、貴重な国産オリーブオイルを期間限定で販売。美容化粧品や石鹸、洗顔クレンジング剤など、様々な品を展開しています。
素麺の産地なのもあり、オリーブオイルそうめんも作っています。
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