ひと昔前には「ダイエット茶」として流行したプーアル茶。発酵させた茶葉で、真っ黒い色と豊かな風味が特徴です。
外見が独特ですがお茶独特の苦みはなく、お茶が苦手な方にお勧めできます。
プーアル茶は中国の雲南省で作られていますが、日本各地にもわずかながら、似た製法のお茶が流通しています。
プーアル茶とは?特徴など
熟茶
緑茶や紅茶の原料でもあるチャノキの葉を採取、加熱し、多湿な環境に晒してコウジカビで発酵させて作ります。
後発酵と呼ばれる工程で、他の茶葉にはない特徴です。
これを「熟茶」と呼び、日本で流通するプーアル茶の大半は熟茶です。
熟茶は色がはっきり出る特徴があり、比較的短期間で完成します。1973年ごろから作られた新しい製法で、短時間で美味しいプーアル茶を大量生産するために用いられる製法です。
効能が高いと言われるのも熟茶の特徴。
餅茶、ビンテージものもあります
コウジカビは使わず、長い間かけて熟すのを待つ「生茶」もあります。こちらが伝統的製法で、現地では生茶を好む傾向があります。
生茶のプーアル茶はビンテージ品が数多くあり、2年から30年ほど寝かせたものが主流です。中には100年発酵させたアンティークのプーアル茶もあり、高値で売買されています。
ビンテージのプーアル茶は固まり、固形物になっています。餅茶と呼ばれ、これを適時削って使います。
加熱した後は必ず天日乾燥させるため、茶葉に含まれるわずかな酵素がさらに発酵を促し、熟成が進みます。
天日乾燥させず、乾燥機にかけると酵素は壊れて発酵が止まり、未発酵茶(緑茶)になります。
種類
中国茶は水色(抽出した色)で6種類に分けられ、「緑茶」「青茶」「白茶」「黒茶」「紅茶」「黄茶」に分類されます。
プーアル茶は「黒茶」の代表で、微生物発酵を行う点で他の茶葉とは大きく異なります。
効果・効能
中国ではプーアル茶を食事中によく飲む習慣があります。伝統的に「脂肪を洗い流し、ダイエット効果がある」などと言われますが、プーアル茶の成分を見ると、その効果は期待できそうです。
プーアル茶はチャノキの葉で作るため、緑茶などに含まれるカテキンが豊富です。
プーアル茶のカテキンは「重合型カテキン」という特殊なもので、通常のカテキンよりさらに効果が高いと言われています。
カテキンの効能は多種多様に渡り、血圧コントロール、血中コレステロール値の調整、血糖値調整、抗酸化作用、抗菌、抗アレルギー、一部のがんに対する抗がん作用など、非常に優れた効果があります。
虫歯予防にも効果が認められ、歯磨き粉にカテキンを添加することも。
重合型カテキンが豊富なプーアル茶を食事中に飲む習慣は、理に叶った飲みかたです。
中国では「三高を下げる」(三高=高血圧、高血糖、高コレステロール)と言われていますが、科学的にも証明されています。
他にもリパーゼという酵素を含み、消化を助ける効果が期待できます。
生活習慣病などの予防の改善が期待できるお茶です。
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利用方法と注意
妊婦さんは注意
様々な効能がうたわれるプーアル茶ですが、お茶の一種なのでカフェインは含まれています。
カフェイン量は一般的な紅茶や緑茶の半分から、ほぼ同じくらい。(100g中約15~30mg)
妊婦さんのカフェイン許容範囲は1日100mgと言われているため、妊娠中は1日数杯程度に止めましょう。
飲み方
中国では伝統的に、暖かいお茶だけを飲みます。最近は日本から冷たいお茶を飲む習慣が持ち込まれていますが、基本的にお茶は「暖かいものを飲む」ことを前提にしています。
真夏でも、できればポットで暖かいプーアル茶を作り、少しづつ飲みましょう。
副作用
副作用は少ないと言われますが、過剰摂取で下痢などが起こることがあります。1日数杯程度に止め、寝る前に飲むのは控えましょう。
飲み過ぎて胃腸が荒れたときは、飴を舐めると一時的に改善します。
淹れ方
プーアル茶をはじめ、中国茶は日本茶や紅茶と煎れ方が少し異なります。
「洗茶」という行程が必要なので、湯を捨てるための容器を用意しましょう。
塊(餅茶)のプーアル茶を煎れる場合は、千枚通しなどで塊をつつき、使う分だけほぐします。
量は、ほんのひと摘みで十分です。足りない場合は都度削って使います。
バラバラの茶葉の場合は、300mlに3gほどをポットに入れます。(ポットは温めなくて構いません)
ポットに少量の熱湯を注ぎ、「洗茶」を行います。これはプーアル茶に付着したゴミやアクなどを洗い流し、茶葉を適度に湿らせる効果があります。
すぐに湯を捨て、さらに熱湯を注ぎます。はじめは蒸らし時間を短めにして、すぐにカップに移しましょう。
プーアル茶は何煎も飲むことができます。特に、高級な茶葉は10煎ほど飲むことができ、1煎ごとに香り、風味が変わります。
安価なプーアル茶は数煎で終わってしまうので、よく飲む方はクオリティの高い茶葉を購入すると良いかもしれません。
どれを選ぶか
最近は中国茶も清潔な工場で作られる傾向があります。そのような環境で作られたプーアル茶なら、洗茶の必要はありません。
高級なプーアル茶は通販などで入手できます。本当に良いものはネットでも情報がなかなか出てこないので、口コミで探す必要があります。
中国製のお茶に不安があるなら、国産のプーアル茶(後発酵茶)がおすすめです。価格は高めですが日本の茶葉で作るので、安全性は確保されます。
エピソード
プーアル茶の歴史
茶の歴史は非常に古く、紀元前2700年にさかのぼります。
中医学の祖とされる伝説の医師、神農がお茶で解毒を行ったという記述が残っています。
現在の形のプーアル茶が作られたのは、西暦6~9世紀ごろの唐の時代と言われています。
唐の記録で、歩日部(現プーアル市)という町から文成公王という女性がチベットに嫁入りする際に、現地の茶葉を持っていった話が残っています。
チベットでも茶を飲む習慣が広がったのは、この頃からと考えられています。
当時の歩日部では茶葉を天日干ししたものを飲んでいました。これがチベットまでの長い道のりで徐々に発酵が進み、着いたころには熟した美味しいプーアル茶に変化したと考えられています。
唐が滅びた後に興った栄の時代、都では茶を愛好する文化が発達しました。
それに伴いプーアル茶の価値は急騰し、歩日部は普日と改名され、お茶生産の重要生産地になりました。しかし、賄賂などの費用がかさみ、茶農家はひどく苦しむことになります。
結果として茶の生産を辞める農家が増え、生産量は落ちてしまいました。
明の時代には茶葉生産も復興し、多くの人に愛飲されるお茶という記述が残っています。
これ以降も発展と衰退を繰り返しながら、プーアル茶は受け継がれます。
現代のプーアル茶
昔の製法がなくなる?
近年、プーアル茶の消滅が起こる危険な時期を迎えます。中共による文化大革命でプーアル茶の複雑な工程は否定され、安易な方法で作ることが強制されました。
かつては野生の茶木の葉で作られていたプーアル茶の製法はここで途絶えます。しかし90年代には再び自由化が起こり、様々な方法が確立されるようになりました。
共産主義的な流通方法は香港にも及び、商人たちは膨大なプーアル茶の在庫を抱えるはめになります。しかし、香港の気候でプーアル茶はますます発酵し、風味が増していきました。
消費者にも好まれたため、これからは温度や湿度を管理した部屋で追熟させる手法が取り入れられました。
価格変動が激しい
プーアル茶は骨董品としての価値が高く、投機の対処にもなりやすい傾向があります。
2005年ごろから投機目的の買い付けが盛んになり、プーアル茶の価格は急騰します。しかし2008年ごろからバブルは弾け、現在は2005年ごろと大差ない価格で取り引きしています。
不安定な中国の事情を鑑みると、これからもビンテージのプーアル茶は急激な価格変動をする可能性があります。
チベットでは
チベットで飲まれるプーアル茶は「蔵茶」と呼ばれ、現在でも日常的に飲まれます。
食事に事欠いても茶は毎日飲む、という諺があるほど普及し、身体を元気にし病気を防ぐ効果があると考えられています。
日本では
日本にも後発酵茶があり、高知県大豊町の「碁石茶」、徳島県相生町の「阿波茶」などがあります。これらにもプーアル茶に近い効能があるとされ、高値で販売されています。
静岡県では緑茶用の茶葉でプーアル茶を作る農園があり、ダイエットティーとして販売されています。
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