ハンバーグのスパイスに欠かせないナツメグは、肉の臭み消しには欠かせません。
一方で、多量に摂取するとトリップしたり、幻覚が見えるなど精神的な影響を受けることもあります。
ここではナツメグの効果と副作用について説明します。
特徴
ナツメグは、モクレン目ニクズク科の常緑高木です。
原産地はインドネシアのモルッカ諸島。熱帯のジャングルに生息しています。
高さは8~16メートルに達し、雌雄の株があります。成長がゆっくりした樹木で、実を付けるまで7年以上かかると言われています。
1本の木から多くて2000個もの実を収穫できます。熱帯なので旬はなく、収穫は一年中行います。
スモモのような実を付け、この種子や皮をスパイスに利用します。
種子を削ったものをナツメグ、実と種子の間にある皮をメイスと呼び、それぞれ特徴のある香辛料として楽しめます。
残った果肉は、加熱すると食べられます。
胡椒、シナモン、クローブに並ぶ、世界四大スパイスに挙げられます。
熱帯の植物なので、日本ではあまり栽培されません。栽培しても実を収穫するのはとても大変で、あまり現実的ではありません。
まれに苗が販売されることもありますが、温暖な地域でなければ実が取れるまで成長させるのは難しいでしょう。
現地では雄の木の風下に雌の木を植え、受粉を手伝わせています。
ゼラニウムの品種改良で、ナツメグゼラニウムがいます。葉からナツメグのような薫りがすることから命名されました。
こちらは日本でも手軽に栽培できますが、全く別の植物なので、ナツメグと同じ効能は期待できないでしょう。
効果・効能
甘い芳香と独特な辛みが混じりあった香辛料で、火を入れることで薫りが引き立ちます。
必ず加熱する料理に入れましょう。
成分はピネン、カンフェン、ボルネオールなど。
痰を取り除く、抗炎症作用、吐き気止め、消化促進、食欲増進などの作用があるとされています。
副作用
生のナツメグには毒性があり、モノアミン酸化酵素阻害薬やミリスチシンなどが含まれています。これらは強力な精神錯乱を引き起こし、痙攣や嘔吐、動悸、全身の痛み、脱水症状などを引き起こします。
5g以上の摂取で、これらの副作用が発生すると言われています。
ナツメグにドラッグのような作用がある、などと言われるのは、これらの成分が原因です。
死亡事故は滅多にありませんが、公式には2例報告されています。どちらにせよ心身を痛めつけることに代わりはないので、過食は絶対に避けましょう。
致死量
致死量は、ナツメグ2個分とされています。
一般的にスパイスに使う程度の量なら問題ありませんが、ナツメグの瓶は子供が触れない場所に上げておきましょう。8歳の子供の死亡例が報告されています。
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利用方法と注意
刺激が強いため、妊婦さんの使用は控えましょう。
ナツメグはハンバーグに入れるもの、というイメージが強いですが、お菓子にもとてもよく合います。
シナモンとナツメグを同量合わせ、ドーナツ生地に合わせて揚げると美味しくできます。(加熱しているので中毒の心配も低くなります)
カレーのスパイスに加えることもあり、特に牛肉の臭み消しに役立ちます。事前に生の牛肉に、ナツメグをまぶしておきましょう。
ナツメグはパウダーとホールがあります。パウダーはどこでも買えますが、よく使うならホールで買うと良いでしょう。薫りが断然違います。
ホールは目の細かい下ろし金ですりおろします。柔らかい種子なので簡単に削れます。
ヨーロッパにはナツメグのホールを携帯し、酒場で酒に携帯おろし金「ナツメグ・ミル」でおろしたてのナツメグを入れて飲む習慣がありました。
ナツメグには食欲増進や胃のガスを止める作用もあるため、薬効でさらにお酒が進んだと推測します。
エピソード
最古の記録では紀元前10世紀のインドで使用された記録があります。古代ヒンドゥー教で頭痛、整腸剤、熱冷まし、口臭予防などに用いられていました。
原産地がインドネシアなのもあり、西洋文明に知られたのは比較的遅く、12世紀に入ってから。
14世紀から始まる大航海時代からヨーロッパに胡椒などのスパイスが流入しましたが、ナツメグやメイスも高級スパイスの一つとして扱われていました。
16世紀ごろまではオランダが独自の販路を握っていましたが、フランスが苗を持ち出しモーリシャス諸島で育てることに成功したのを皮切りに、熱帯各地で栽培が始まりました。
16世紀のヨーロッパでもナツメグの果肉加工品が出回り、当時の栄養学者が果肉の砂糖漬けを栄養補助食品として学生に勧めていました。
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