最近はあちこちで増えているインド・ネパール店。食後のお茶(チャイというスパイス入りミルクティー)に、緑色のレーズン大のスパイスが入っていた経験はあるでしょうか。
これがカルダモンで、爽やかな薫りと風味付けに重宝するスパイスです。
見慣れない外見ですが、実はショウガの一種。カレーの風味付けに使うこともあります。
カルダモンはどのようなスパイスでしょうか。
特徴
カルダモンはショウガ科ショウグス属の多年草です。
ショウガは一般的に根を利用しますが、カルダモンは種とさやを使います。
和名はショウズク(小豆蒄)。
インド、スリランカ、マレー半島が原産です。様々な品種があり、グリーン色、黒色など様々な種類があります。
ユーカリ油やレモン油などがブレンドされたような上品な薫りで、「スパイスの女王」と謳われることも。
日本では、漢方薬の生薬としても正式に登録されています。
効果・効能
消化促進
消化促進の効果があり、胃もたれを和らげます。シオネールという香料が口を刺激し、唾液を分泌させます。
唾液にはアミラーゼという消化酵素があり、主にでんぷんの消化を助けます。さらに、胃を刺激して動かす作用もあり、二重の効果で消化を助けます。
消臭効果・抗炎症作用
シオネールは消臭効果も高く、口臭予防や肉、魚の臭み消しに使われます。食品だけでなく、衣類の消臭にも効果があります。
臭いを取り、しかも爽やかな薫りを付けるため、インドや中東など暑い地域には欠かせません。
抗炎症作用もあり、胃潰瘍の予防にも役立つと言われています。
香り成分とその効果
カルダモンの薫り成分のαーテルピネオールや1.8ーシオネールは緊張をほぐし、深いリラックスに導く効果が期待できます。ストレスで家に帰っても落ち着かないときは、カルダモンを入れた甘い紅茶を飲んだり、カルダモンの精油を炊いてみましょう。
疲労回復の効果もあると言われています。
他にも高血圧や動脈硬化の改善や予防、NK細胞を活性化させる作用があり、免疫力の活性化などの効能があるという研究報告もあります。
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利用方法と注意
妊婦さんや乳幼児は少し注意
妊婦さんが多量に使うと問題が起こると言われています。完全に絶たなくても良いですが、特に妊娠初期は過剰摂取に気をつけましょう。
乳幼児への摂取も控えます。
使い方
カルダモンは、グリーン色のさやに包まれたホールと、粉状のパウダーがあります。どちらも効果がありますが、ホールのほうがより薫りと風味が良い傾向があります。
カレーに入れたり、チャイに入れると効果的に摂取できます。インド料理にはピラフ(炊き込みごはん)にそのまま丸ごと入れることも。
使い切るのが難しいスパイスですが、大手メーカーから5粒ほど入った少量パッケージも販売されています。はじめはごく少量を買うほうが無駄になりません。
ホールの使い方は、グリーンのさやを軽く潰して、そのまま投入します。
ここではチャイの作り方をご紹介します。スパイスはお好みのものをお使い下さい。
チャイの作り方(1杯分)
(用意するもの)
- 茶葉 ティースプーン山盛り1杯
- 水 150cc
- 牛乳(できれば新鮮な高脂肪乳)50cc以上
- カルダモン(潰したもの)ホール1粒
- シナモン 1/2本(またはパウダーを2振りほど)
- クローブ ホール1本
- しょうが 薄いスライス1枚
- 砂糖 お好みの量
- 目の細かい茶こし
小さな鍋に水と茶葉、スパイスを入れ、沸騰させます。
2分ほど沸騰させたら牛乳を入れ、再び火にかけます。
鍋の周辺が軽く泡立つ程度に暖まったら火を止め、茶こしで漉してカップに注ぎます。
お好みの量の砂糖を加えると完成です。
茶こしがない場合は、ティーバックに茶葉とスパイスを入れて煮ると簡単に作れます。
栽培は難しいか?
日本でも栽培できますが、難易度は高いので園芸に慣れた人でないと難しいかもしれません。
手間がかかるわりに少量しか採取できないため、「新鮮なカルダモンがほしい」「カルダモンが育つ姿が見たい」方向けです。
年間を通して20℃以上の温度で管理します。冬越するためには、最低でも8℃以上なければ枯れてしまいます。
しかも、一年じゅう半日陰の穏やかな日光が必要です。
保温完備のビニールハウスがない限りは、日本で育てるのは難しい植物です。
乾燥や直射日光に弱く、湿度が高い環境を好みます。乾燥しすぎるとハダニが発生するので、専用の殺虫剤で対処するか、葉の裏に霧吹きを吹いてハダニを落とします。
水はけの良い、豊かな土壌を好みます。赤玉土6に腐葉土4を加え、5月から10月までは2ヶ月に一度、固形肥料を根もとに与えます。
5~8月に苗を植えます。この時期は株分けにも適しているため、大きな株から子株をもらう方法もあります。
水を切らさないように与え、冬場はやや乾燥気味に育てます。翌年の6月ごろに花を咲かせ、実を付けます。
夏は半日陰の木陰で育て、冬は室内に入れるという方法もあります。日本でも南の地域なら、この方法で乗り切れるかもしれませんが、室温には気を付けましょう。
エピソード
人類最古のスパイス
人類最古のスパイスの一つに挙げられ、特にインド料理には欠かせません。インド医学、アーユルヴェーダでも重要視される生薬の一つです。
カルダモンの名は、ヒンドゥー語の「心臓(カルディア)の形をした生薬(マモーマム)」から生まれたと言われています。
インドでは紀元前5世紀には使われていた記録があり、泌尿器系の治療、肥満防止の効果があるとされていました。消化力を高める効果があることも知られています。
解毒剤としても使われた
中東の古代大国バビロニアでは、紀元前8世紀に庭園で育てられていました。解毒作用のあるスパイスの一つと考えられ、毒殺の危険に晒されていた権力者に解毒剤として処方されていました。
しかし、常用しすぎて毒への耐性が付いてしまい、自害しようと毒をあおったら即死できずに苦しんだという逸話も残っています。
中東では歓迎のシンボルとされ、お客をもてなすのにコーヒーにカルダモンを入れた「カルダモンコーヒー」を出します。コーヒーポットの口にカルダモンの種を詰め、注ぐことで風味付けをします。
現地では、カルダモンの作用でコーヒーの毒を中和すると言われています。
スウェーデン人はよく使う
時は経ち8世紀ごろ、北欧のヴァイキングがスカンジナビア半島に侵攻し、コンスタンティノーブルを襲撃します。戦利品として特産のカルダモンを母国に持ち帰ったことから、ヨーロッパでの利用が始まりました。
現在もヴァイキングの子孫、スウェーデン人はカルダモンを使うことが多く、アメリカ人の50倍も使用すると言われています。スウェーデンでは、カルダモンを噛みながら酒を飲みます。
日本では
日本では漢方薬の生薬でもあり、日本薬局方に「小豆蒄」の名で登録されています。胃を丈夫にする作用があると言われています。
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