南米アンデスで古来から楽しまれていたマテ茶は、ほのかなコクとさっぱりした味わいのお茶です。
近年、日本コカコーラなどが相次いでペットボトル飲料として販売を始め、日本でも徐々に認知度が上がりつつあります。
お茶によく似たハーブティー、マテ茶とはどのような飲み物でしょうか。
マテ茶とは
マテ茶の原料、マテはイェルバ・マテ(yerba mate)という葉を加工したものです。
イェルバ・マテはモチノキ科の常緑樹で、ブラジルとパラグアイ、アルゼンチン3カ国の境目にある巨大な滝「イグアスの滝」周辺が原産です。
イグアスの滝は世界有数の自然公園で、黄金色の魚ドラードなど固有の動植物の宝庫です。
名前の意味はスペイン語の「草」(yerba)に、ケチュア語の「コップ」または「ひょうたん」(mate)を組み合わせた造語です。
マテは低木ですが、時には高さ15メートルほどの大木になることも。葉は楕円で、少しだけギザギザがあります。
マテの葉には、他の植物には珍しくカフェインが含まれています。カフェインを含む植物は、茶の原料になるチャノキやコーヒー豆が主流ですが、マテは「第三のカフェイン系飲料」になる可能性があります。
チャノキに比べて量は1/3ほどと微量で、副作用や中毒を起こしにくいローカフェイン飲料です。
マテ茶ができるまで
マテ茶の作り方は、緑茶に近い製法です。
葉や小枝などを採取し、すぐに火入れを行い酸化酵素を不活性化させます。さらに熱風で乾燥させ、完全に酵素の働きを止めます。
カラカラに乾燥したマテの葉や枝は適度な大きさに刻まれ、1年ほど熟成させます。これで美味しいマテ茶が完成します。
この状態のマテ茶は「グリーン・マテ」と呼び、強い苦みと青臭さを感じます。
これを焙煎することでクセを取り除き、香ばしい薫りに仕上げたのが「ロースト・マテ」(黒マテ)と呼ばれます。
焙煎するのでビタミンは壊れてしまいますが、飲みやすいのが特徴です。日本で販売されるマテ茶のほとんどは、ロースト・マテです。
緑茶は製造後すぐに飲まないと薫りが飛んでしまい、美味しく味わえません。その点、マテ茶はプーアル茶の一つ生茶のように熟成する課程があり、茶文化に通じるものがあります。
南米の伝統的な茶
マテの原産地は高地で、生の野菜などが簡単に摂取できない地域です。そこで、マテの葉でビタミンやミネラルを摂取する方法が編み出されました。
茶は1000年以上前から、チベットなどの高地で野菜が摂取できない地域の人々の健康を支えています。それと同じことが、南米ではマテ茶で行われています。
現地での飲み方
伝統的な飲み方は独特で、コップに1/2以上のマテ茶の葉をそのまま入れ、70~80℃くらいの湯を注ぎます。
そこに、茶こしが付いた金属のストローを差し込み、そのまま吸って飲みます。
熱湯では熱すぎて、ストローで飲むことができません。80℃以下という温度は、伝統的なマテ茶を飲む際には欠かせません。
ほかの地域の茶文化にはない飲み方ですが、これはマテ茶が単なる嗜好品ではなく、栄養摂取という点も兼ねているためです。
ストローで飲むことで、マテ茶の細かい茶殻が口の中に入ってきます。この茶殻も栄養源になり、高地の人々の健康を支えます。
効果・効能
ビタミン・ミネラルなど栄養豊富
多彩な栄養価を含み、「飲むサラダ」と呼ばれることもあります。
ビタミンA、B、鉄分、カルシウムが特に豊富で、茶葉と比べると突出しています。
抽出成分100ccあたり、カルシウム17.1mg、マグネシウム13.0mg、鉄分0.59mg、亜鉛0.82ppmなどが検出されています。
烏龍茶の30倍以上のカルシウムと13倍のマグネシウム、20倍以上の鉄分、3倍の亜鉛を含みます。
しかも、マテ茶は抽出液にも食物繊維が含まれます。そのため、100cc中0.9%も食物繊維が含まれています。
タンニン少なめ
茶葉にも豊富な栄養が含まれますが、茶葉に含まれるタンニンは鉄分と結合し、栄養の吸収を阻害します。
マテ茶にはタンニンが少ないため、吸収を邪魔されることなく、マテ茶の栄養をそのまま取り込むことができます。
これらの作用で滋養強壮、疲労回復、ビタミン補給など、様々な効能が期待できます。
肉食中心の南米の人々の健康を支えていると言われ、スタミナ源でもあると考えられています。
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利用方法と注意
妊婦さんや小さいお子さんは注意
マテ茶には、少量ですがカフェインが含まれています。
量は紅茶の約1/3ほどですが、飲み過ぎると多くのカフェインを摂取することに。
特に、妊婦や乳幼児の多飲は危険です。赤ちゃんに与えるのは止め、幼児や妊婦さんは薄めたものを少量飲むに止めましょう。
しかし、ミネラルが豊富なので、栄養摂取という点では決して悪いものではありません。出来れば、有機栽培のマテ茶を頂きましょう。
発がんの危険性?
国際がん研究機関IRACは、熱いマテ茶に癌を誘発すると公表しています。
伝統的なマテ茶の飲み方はストローで吸い出す方式ですが、これで熱い茶が直接喉を通るため、刺激を受けて食道がん、喉頭がんを誘発すると警告しています。
ただし、これはあくまで「伝統的な飲み方」をした場合で、マテ茶そのものにはヒトに対し発癌性は確認されていません。マテ・ティーとして飲むなら、問題ないと考えられます。
ボリビアで注文するときは
ボリビアに旅行する際は、マテ茶を注文する際に注意が必要です。
ボリビアでは「マテ」という言葉は「ハーブ全般」を指すため、ほかのハーブが入ったマテ茶が出ることがあります。
エピソード
マテ茶の歴史
マテ茶の起源は不明ですが、古来から地元のインディオの人々に飲まれていたと考えられています。
最古の記録は15世紀末ごろで、スペイン人の植民に記されています。当時からパラグアイを中心にイェルバ・マテの栽培が始まり、現在のような大規模栽培の先駆けになっていたようです。
やがてマテ茶はアルゼンチンやブラジルにも広がり、南米を中心に広く飲まれるようになりました。
飲み方は4種類ある
マテ茶の飲み方は、大きく分けて4種類。
- コップに大量の茶葉を入れてストローで飲む、伝統的な「スィマロン」(ブラジルではシマウロン)。苦マテとも呼ばれ、濃いコクが楽しめます。
- 苦マテに砂糖を入れた「マテ・ドゥルセ」(ドーセ)。
- 紅茶のように、ティーポットに茶葉を入れて熱湯を注ぎ、3分ほど蒸らした「マテ・ティー」。
- 冷水に10分ほど浸して抽出した水出しマテ茶「テレレ」。
マテ茶は冷たい水でも栄養価を抽出しやすいため、このような飲み方が昔からあります。
現在は「マテ・ティー」が大半で、ストレートだけでなく、砂糖やミルク、はちみつ、リキュールなど、自由に楽しみながら飲んでいます。
飲み方に作法があります
茶に茶道があるように、マテ茶にもマテ茶道があります。
茶道では来客に抹茶を回して振る舞いますが、マテ茶道でも器とストローでお茶を立て、一煎目はホストが飲みます。
二煎目から順番に来客に一人づつ回し、客はそれを飲み干してからホストに返すのがルールです。
(日本の茶道のように、客で回し飲みはしません)
ストローの位置が変わると味が変わってしまうため、客が勝手にストローの場所を変えることはできません。ホストから頂いて飲み干して返す、というのがスマートなマテ茶道とされています。
ホストは都度、茶葉を足したり、ストローの位置を変えたりして、味の調整を行います。
客は満足したら、ホストに茶器を返すときに「ありがとう」と声をかけます。ホストはこれで客が満足したと判断し、以降は回しません。
欧米人の救世主となる?
マテ茶は南米人だけでなく、カフェインに弱い欧米人にとっても貴重な飲料になる可能性があります。
カフェイン中毒は、特に欧米人にとって深刻な問題です。
東洋人があまり酒に強くないように、欧米人もカフェインに強くない傾向があります。
慢性的なカフェイン中毒にもなりやすく、コーヒーショップが盛んです。毎年カフェイン中毒で死者が出るほどで、飲料のカフェイン含有量を厳しく制限している国もあります。
マテ茶はローカフェインの飲料で、ハーブティーにありがちな物足りなさを感じにくい傾向があります。
現在はドイツを中心に、EU圏でも認知度が上がっています。
マテ茶鶏
南米に進出した日本法人が、マテ茶を鶏に与えて育てた「マテ茶鶏」が市販されています。
日本でも茶殻を与えた鶏などが市販されていますが、その製法を南米で応用したものです。
冷凍パックが大手外資系スーパーなどで販売され、安価なわりに臭みが少なく食べやすいと評判だそうです。
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