夏の河川敷で、夜に咲く美しい花をよく見かけます。
たった一夜で萎んでしまう儚い花は、月見草と呼ばれます。
ハーブとしても優秀で様々な効能があるとされ、月見草オイルが入った化粧品やシャンプーなどが販売されています。
月見草とは、どのような植物でしょうか。
特徴
月見草はアカバナ科マツヨイグサ属の総称です。二年草で、2年目に花を咲かせます。
マツヨイグサ、コマツヨイグサ、メマツヨイグサ、オオマツヨイグサなどの種類があります。
原産地は南北アメリカで、有史以前からネイティブアメリカンが薬草の一つとして利用しています。
別名はマツヨイグサ(待宵草)。夏の季節の風物詩で、俳句では晩夏の季語です。
英語名はevening primrose、またはoenotheraと呼ばれます。
育て方
草丈は15~60cmほどで、とても丈夫な植物です。
痩せた土地で育ちやすく、肥料の与えすぎはかえって枯れる原因になります。少し湿った土壌を好みます。
日当たりの良い、風通しの良い環境が理想です。赤玉土が多めの、水はけの良い土を用意しましょう。
種蒔きと株分けで増やすことができますが、種から育てると1年以上かかります。早く花を咲かせたいなら株分け(または苗を購入)がおすすめです。
3月か9月ごろに植え替えます。根が弱く、根が傷つくと上手く育ちません。育苗ポットから土ごと取り出し、崩さないように植え替えましょう。
生育は旺盛なので、直植えする際は30cm以上間隔を開けておきます。
病害虫には強く、育てやすい植物です。水切れには弱いため、特に夏場は注意しましょう。
季節・開花のタイミング
6~9月が開花期です。夜に咲き、明け方にしおれてしまいます。
白い花の場合、咲き始めは白ですが、しおれる前には赤い色に染まります。これは、花の中にアントシアニンが増えるためです。
白以外にも、黄色、ピンクなど様々な色があります。
夜に花を咲かせるのは、蛾(特にスズメガ)に受粉してもらうため。昼に咲くよりも競合相手が少ないため、より確実な受粉が見込めます。
花言葉は「無言の愛」「移り気」「ほのかな恋」など。
薬草として使われていた
ネイティブアメリカンは、昔から月見草を薬草として使っていました。草と種を丸ごとすり潰し、傷口を癒していました。できものの治療にも使われています。
内服して痛み止め、咳止めなどに使うこともありました。
その効能を知った西洋人は、17世紀にヨーロッパに月見草を移入します。まずはイギリスに導入され、効能の高さが評判になり、瞬く間にヨーロッパ中に広がりました。
西洋薬の進歩で一時的に廃れましたが、月見草は再び脚光を浴びます。
月見草の種を絞った油、月見草オイルに成長ホルモンの材料、γ-リノレン酸が豊富に含まれていることが発見されたのです。
様々な効能が期待できることが判明し、現在はサプリメントなど健康食品として活用されています。
日本には1850年ごろに、アメリカから輸入されました。黒船が持ってきたという説もあります。
日本コカ・コーラ株式会社のロングセラー飲料、「爽健美茶」の成分として有名です。
はと麦、玄米、月見草~と歌うCMが、長い間テレビで流れていたのを覚えている方もいるのでは?熾烈な清涼飲料業界で1993年の発売以来売れ続け、定番商品になりました。
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月見草油(オイル)について
効果・効能
月見草オイルには、必須脂肪酸のγ-リノレン酸が7.5%ほど含まれています。γ-リノレン酸を含む食品は大変少なく、その中でも月見草オイルは突出しています。
動脈硬化や高血圧の予防、悪玉コレステロールの低減、美肌効果、アトピー性皮膚炎の軽減などの効果が期待できます。
ホルモンバランスを整える働きがあると言われ、PMS(月経前症候群)や更年期障害を改善する効果が期待できます。
肝機能を高める効果もあると言われています。
母乳にも含まれている成分で、粉ミルクや離乳食などにも添加されています。
γ-リノレン酸は、体内に入るとジホモ・γ-リノレン酸という物質になります。これは成長ホルモン、プロスタグランジンの材料になる、貴重な成分です。
プロスタグランジンには血糖値やコレステロール値を下げ、血管や気管を広げ、血液凝固を防ぎ、子宮を収縮する作用があります。人体にはごく僅かにしか含まれていませんが、ほんの僅かでも効果が期待できます。
γ-リノレン酸は皮膚を維持するために必要です。皮膚は新陳代謝が激しい器官で、トラブルを起こしやすい部位です。
何らかの事情でγーリノレン酸が不足すると、皮膚の水分調整が働かず、乾燥してしまいます。これが皮膚炎の元になると考えられています。アトピー性皮膚炎の患者は、発病していない人に比べてγ-リノレン酸が半分ほどしかないことが判明しています。
そのため、イギリス、フランス、ドイツなどEU諸国では、γ-リノレン酸をアトピー性皮膚炎の医薬品として用いられています。
月見草オイルは熱に弱いため、低温で圧搾して絞るのが一般的です。
注意点
月見草オイルには子宮を収縮する作用があります。妊婦さんは使用を控えましょう。
ワーファリンなど、血液をサラサラにする薬を飲んでいる方は、ますます出血が止まりにくくなる可能性があります。必ず主治医に相談した上で使用しましょう。
まれに、副作用で頭痛や胃腸障害が起こることがあります。
様々な効能が期待できますが、小規模の研究が多く科学的根拠には疑問視されるものが多いとされています。
そのため厚生労働省は「月見草油の使用を支持する十分な根拠はありません」と結論付けています。一方で、明らかに効果が期待できるデータも多数報告されています。
判断が難しいところですが、全く効果がないハーブならネイティブアメリカンやヨーロッパの間で広がるとは思えません。まずは試して自分自身で実感できるか確かめてみましょう。
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