チャービルは別名のセルフィーユの名のほうが有名かもしれません。優しい風味がクセになるハーブです。
セリ科植物特有の繊細な葉は、飾りに重宝します。肉料理から魚料理、サラダまで何でも使える万能ハーブです。ハーブティーにも使われ、クセの少ない優しい風味が楽しめます。
パクチーのような独特な風味がないので、生でも美味しく食べることができます。
栄養価が高く、野菜としても優秀なハーブです。葉を食べる品種と、根を食べる品種があり、根はコクのある人参のような風味がします。
チャービルの特徴について
セリ科シャク属の一年草です。
葉はイタリアンパセリやパクチーによく似た姿で、パセリに近い仲間です。
フランス料理に盛んに用いられ、フランス語名の「セルフィーユ」、または「フレンチパセリ」と呼ばれることも。
水耕栽培されたものもあり、通年流通しています。価格は道の駅など直販所や高級スーパーで、1株300円ほどです。
原産
ロシア南部のコーカサス地方から西アジア一帯が原産と言われています。古代ローマ人の手でヨーロッパ中に広がり、現在はヨーロッパ一帯やアメリカ北東部に自生しています。
荒れ地でも元気に育つ、生命力の強い植物です。
日本でも栽培はできる?
パセリに近い仲間ですが、直射日光と湿気が苦手な植物です。日本の環境にはあまり合わない傾向がありますが、日陰の窓辺やベランダなどで育てると良いと言われています。
日陰でもすくすく育つ野菜やハーブは限られますが、チャービルは元気に育つことが期待できます。
品種
チャービルは根を食べる品種もありますが、葉を食べる品種が主流です。根を食べる品種(ルートチャービル)は、葉に毒があるので注意しましょう。
草丈は10~50cmほどで、人参やイタリアンパセリのような細かい葉をたくさん付けます。初夏(5~7月ごろ)に白く小さな花をたくさん咲かせる、素朴な愛らしさも魅力です。
花を咲かせたら、すぐに枯れてしまいます。ハーブとして楽しむなら、つぼみのうちに切り取りましょう。
効果・効能
栄養価
野菜としても優秀で、豊富な栄養があります。
ビタミンC、ビタミンB群、ビタミンA、鉄、カルシウム、マグネシウム、カロテンなどを含みます。
若々しい体作りや消化吸収の促進、造血作用、骨の形成を促し、目の健康などに効果があります。
皮膚や粘膜を丈夫にして、風邪をひきにくくする作用もあります。
食物繊維も豊富で、デトックス効果も期待できます。解毒効果もあると言われています。
冷えや胃腸の不調に
冷えを改善し、胃腸の不調を改善する効果もあると言われています。ハーブティーで毎日少量飲み続けると、これらの不調の改善が期待できます。
フランスでは、消化不良の民間医療に使うことも。食べ過ぎ、飲み過ぎたときに試してみると良いかもしれません。
肝機能傷害や低血圧、関節炎などにも効果があるという説もあります。
利用方法と注意点
妊婦さんや授乳期間の方は注意
チャービルは興奮作用があります。妊娠中、授乳中の過剰摂取は避けましょう。少量なら問題ないと言われていますが、念のため産婦人科で相談したほうが賢明です。
チャービルを美味しく食べるには
チャービルの葉は、少しでも枯れると薫りがほとんど失われてしまいます。繊細な風味と薫りなので、できるだけ新鮮なものを入手しましょう。
家庭菜園で育てるのが理想です。特にサラダの材料やドレッシングの具など、生で食べるなら新鮮さが命です。
肉料理や魚料理とともに調理しても、飾り付けに使っても美味しく頂けます。オムレツの溶き卵にチャービルを刻んで入れても、優しい風味が味わえます。スープの具、ケーキのハーブにも意外と合います。
イワシのような庶民的な料理も、チャービルで調理すると高級フレンチのような高級感が味わえます。
ルートチャービルの葉は食べないように
根を食べる品種のチャービルは、日本ではほとんど栽培されていません。しかし、ごくわずかにルートチャービルの種が流通しています。
もしルートチャービルを育てるなら、葉は絶対に食べないように気をつけましょう。葉には毒があります。
チャービルが収穫しすぎて使い切れないときは、冷凍保存もできます。冷凍すると風味が落ちるので、早めに使い切りましょう。
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育て方
チャービルは少し湿り気のある土壌を好みます。移植すると枯れやすいので、出来れば種を直播きして間引いて育てるのが理想です。
苗も市販されていますが、できるだけ小さく頑丈な苗を選びましょう。
種まき
種まきは3~4月と、9~10月がシーズンです。(苗の植え付けは5月ごろと、10月ごろ)
水を切らさないように与え、株間を最終的に20cmほど開けて育てます。
できるだけ水は多めに与え、土が乾燥しないように気を付けましょう。乾きすぎると葉が固くなり、食べられなくなります。
プランターの場合
ベランダ菜園の場合は、10cmも成長すれば収穫できます。外の葉から必要な分だけ摘み取ると長い間楽しめます。サラダの彩りや料理用のハーブなど、生でも加熱しても使えます。
葉が付いていれば一年中収穫できますが、2~7月ごろまでが主な収穫期です。
害虫について
主な害虫はアブラムシなど。高温で弱っているとアブラムシ被害が増えるので、できるだけ涼しい場所で管理しましょう。
高温で蒸れた環境が続くと、立ち枯れ病で枯れてしまいます。出来るだけ涼しい環境をいかに作るかが、チャービルの生育に欠かせません。
エピソード
チャービルは古代ローマの時代から知られていた植物でした。古代ローマの時代からハーブの一つとして使われ、人の手で各地に広まりました。
しかし当時は食べる雑草くらいの扱いだったようで、本格的に食用にされたのは19世紀ごろとされています。
チャービル(英語)、セルフィーユ(仏語)の語源は「蜜ろう(のような葉)」を意味するラテン語cereifoliumです。和名はウイキョウゼリ、ノハラジャクと呼びます。
宗教的行事に欠かせないハーブだった
キリスト教では浄化する力があるハーブと考えられ、春の復活祭の前に食べる習慣があります。
カトリックの聖職者は、復活祭の前の期間(四旬節)に断食したり、肉絶ちを行います。かつては一般の信者も四旬節の断食を行い、ドイツではビールを飲んで乗り切っていました。
チャービルはより手軽に行える浄化の方法と言えるでしょう。
四旬節の間に鶏が産んだ卵は大事に保管し、復活祭に一気に食べられました。この卵とチャービルも相性が良い組み合わせです。
フランスでは根を食べる品種が好まれている
チャービルはフランスで特に好まれ、オムレツやサラダのドレッシング、肉、魚料理など様々なものに使われます。
根を食べる品種は、現在はフランスだけで愛される野菜です。
中世のころ、ロワーヌ地方の領主が北欧から根を食べるチャービル(セルフィーユルート)を持ち帰り、栽培させたのが興りと言われています。フランスのロワール地方、ブルターニュ地方では盛んに栽培されていました。
芋と人参の中間のような外見で、「クルミのような濃厚な風味と甘みのある芋」と表現される、独特の風味がします。
第二次大戦後は栽培が廃れてしまいましたが、現在も10月ごろに地域野菜として地元で出回ります。
現在は年間わずか5万トンほどしか流通していませんが、伝統食の見直しが進み、栽培する農家は増えていると言われています。
日本でもプロのフレンチやイタリアン職人用に、期間限定でフランスなどから空輸されたセルフィーユルートが流通しています。
花言葉
花言葉は「正直」「誠実」「慎重な恋い」「真心」など。
出典は不明ですが、小さく可憐な花をたくさん付ける姿にふさわしい花言葉です。
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